しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/05/18「運のお裾分け」

しおかぜ町も夏の陽気である。

だるい。

まだ、暑さに体が慣れていない。

 

喫茶『エルベ』に香田さんがいた。

アイスコーヒーにガムシロを2個入れている。

まあ、好き好きだけれどね。

 

私は5月になってから

なにかとバタバタしていて、

ギャンブルどころではなかったのだが、

香田さんは好調らしい。

ごきげんだ。

「宝くじまで、当たっちゃったよ」

どうせ、連番で10枚買ったらひとつは当たる

6等200円だろ。

そう思ってたら、4等1万円だと言う。

「え、すごいじゃないですか。なかなかないですよ」

「だろ~」

ご満悦である。自慢したくて仕方がない様子だ。

「運を全部使っちゃったな。もう、競馬もだめだよ、きっと」

マスターが口をはさむ。

「うるさいな。これからは俺の時代だ」

香田さんは、元気いっぱい、意気軒昂である。

さすがは、ガムシロ2個の甘いアイスコーヒーを飲む男だ。

「それじゃあ、今日はごちそうさまでーす」

思いっきりの笑顔で、帰ろうとしたが

拒否された。

「センセー、それはないない。自分の分は自分で払いな」

残念、運を分けてはもらえないようである。