しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から 2023年3月16日

しおかぜ町は、海のそばである。

分かりやすい町名で、想像力なんか必要ない。

イメージ通りの場所である。

 この町にも春が来た。

庭や空き地に、花が目立ち始めた。

ほっとする。

今年の冬は、寒さが厳しかったからだろう。

 

「好きな季節は冬」

 昔の私は、そんなことを言っていた。

今では、春、さらに、夏の暑さも悪くない。

そんなことをヌケヌケ喋っている。

 二十代の頃は、体が熱を持っていて、

寒さに強かっただけ、なのかもしれない。

「寒さが苦手になった?

コココ、それはまだ元気だってことだよ。

アタシみたいな歳になってごらんよ。

もう、暑いのも寒いのも、あまり感じなくなるから」

 ご近所のクニエダさん。九十五歳である。

それでも、やはり春は楽しみだそうだ。

「あと五回は桜を見たいからなあ」

 今朝、会ったときに言っていた。腰を伸ばして言っていた。