萌花が、無事にフランスから帰国した。
エッフェル塔のキーホルダーをくれた。
修学旅行のおみやげみたいだ。
ルーメンも同時に帰国したが、
行かなければならない場所があり、
空港で別れたらしい。
石川県に知り合いがいて、震災のお見舞いとのこと。
えらいな、ルーメン。驚くべき顔の広さだ。
しかし、そもそも彼女の自宅はどこにあるのだ?
基本、旅の空の下である。
神戸におばあさまがお住まいなのは聞いているが、
ルーメンの住民票があるわけではなさそうだ。
まあ、神秘的な自分を演出しているのかもしれない。
そのルーメンが、萌花を助けてくれた。
おかげで、萌花のフランスでの残務整理は終わった。
「ルーメンさんのおかげだよ。家具なんかも、高く売れた」
というわけで、いよいよ本腰を入れて働き口を見つけなければならない。
人手不足と言われてはいるが、業種にもよるだろう。
「やっぱり、飲食業かな」
留学は中止したが、彼女のワインの知識が人並み以上なのは間違いない。
「そうだといいけどね、へへへ」
とりあえず、2,3日は休んでいいかな。
眠そうに萌花が言う。時差もある。
当然だ。
「晩メシは寿司でもとろうか」
「いいのかな、そんな贅沢して」
「まあ、まだ、それくらいの蓄えはあるさ」
「うん。うれしい。お寿司だあ」
ひとりの食事が続いていた。私もうれしい。
日常が戻って来た。