今日は公立中学校の卒業式だ。
知り合いの真田さんの息子、翔太もめでたく卒業である。
それにしても、高校入試が終わって
即、卒業式とは、15の春は忙しいものだ。
式に向かう彼の両親に出会った。
きっちりとした服装をしている。
「おお、三ツ色さん、怪我はもういいのかい?
たいへんでしたね」
「はい、まあ、なんとか。あの、
本日はおめでとうございます。天気がよくて、よかったですね」
「はい、ありがとうございます」
最近の中学校の卒業式ってどんな感じだろう。
私も、元教員だから興味はあるが
保護者ではないから出席するわけにはいかない。
”地元の名士”にでもなれば、
来賓として招かれるかもしれないが、
無理な話である。
じゃあまた、と言って別れる。
そうだ、翔太の高校入学祝いを買っておかないとな。
英和辞典を贈ってやると言ったら、嫌そうな顔をしていたっけ。
そういう顔を見るのも面白そうだが、喜ばれないのも困る。
どうしても、お金のかかる時期だ。さっき会った両親のことを考えると
商品券とかクオカードとかがいいのかな。
まあ、そのあたりかな。
考えながら歩く。
駅前の商店街まで来た。
タウン誌の記事の取材だ。
『えんむすび』
おにぎり専門の店である。
新規開店で、隅々まできれいである。
基本はテイクアウトとのことだが、
小さなイートインコーナーがある。
下町によくあったたこ焼き屋みたいな造りである。
そこで店主が話を聞かせてくれた。
いそがしい開店前にありがたい。
礼を言うと、ご主人がていねいに頭を下げる。
「いえ、こちらこそありがたいです。
いい宣伝になります」
米にこだわりはあるが、高級米を使えばいいというものでもないんです。
「炊き方といいますか。水分量なんかはその日の湿度や水の温度との関係もありますし。それにお茶碗でいただくごはんとちがって、握り飯にして旨いかどうか考えないと」
ご主人はなかなか饒舌で興味深い話をたくさんしてくださった。
「具は、当たり前のものしか使ってません。梅とか鮭とか。大きな店じゃないし、なかなか冒険もできないので、珍しい具材はなかなか。試したいものはあるんですけどね、例えばバターを添えて醤油を垂らすとか」
バターおにぎりは旨そうじゃないか。いつか、ぜひ。楽しみにしています。
店構えと店主夫妻、商品を撮影して取材を終えた。
自分用に鮭ハラスと昆布の2個を購入して、昼食にした。
贔屓(ひいき)にしようと思った。