しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/04/11

桜花賞は、ド本命が来た。

血統は大事、あらためて。

香田さんが、

ほれ、みたことか、

という顔をしているだろう。

今週は『エルベ』には行くまい。

 

電車の中から街を見る。

戸建てやマンション。

どの家にも、

人が暮らしていて、生活があって

さまざまな出来事があって、

大小の事件(と言うと大げさだが)が起こる。

 

子供の進学。健康問題。

恋愛や、勉強の悩み。

親子、兄弟げんか。

近所づきあい。

他人から言わせると

そんなに心配しなくても。

そういうことでも

当事者にとっては大問題だ。

 

真田さんの息子は中学三年生だ。

地元の公立中学に通っている。

吹奏楽部でトランペットを吹いている。

出会うと、元気な挨拶をしてくれる。

なにも問題はなさそうだが。

「来年は高校受験やしな」

オヤジが言う。

そりゃ、そうだな。今、三年だからな。

「公立に行ってくれたらええけど、私学の併願も考えなあかんし」

なるほど、でも

「翔太くん(しょうた。息子の名前だ)は成績いいんじゃないの?」

「親が親やしなあ。たいしたことないわ」

そうは言っても、あんたも関西の某有名私大の出身じゃないか。

奥さんも、たしか〇〇女学院だし。

「学年で10番くらいや」

できる子やん、翔太。オヤジは何を不安がっている?

「受験やから、絶対、ゆうのはないやん」

それを言い出したら、すべてがそうじゃないか。

世の中、絶対ってことはない。

そうだ、競馬における血統だってそうだ、絶対そうだ。

翔太の受験と競馬を並べるのは失礼なので

これは黙っておいた。

 

その翔太と話すと

吹奏楽部があったら、どこでもええねんけどな」と言っていた。

「高校、合格したら、お祝いくれますか」

「英和辞典でもプレゼントする」

「……」

そんな嫌そうな顔するなよ。