しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/07/16バンド結成? ホントに?

しおかぜ町も猛暑である。

宗介さんが話があるという。

喫茶『エルベ』で待ち合わせ。

常連の香田さんがカウンターにいた。

いつものようにガムシロップをふんだんに入れて、

アイスコーヒーを飲んでいた。

宗介さんが来るので。

香田さんにそう言って、テーブル席に座った。

私のアイスティーを、マスターが運んできたときに

宗介さんがやって来た。

「悪い、悪い。三ツ色さん、待たせちゃって」

暑い暑いと言いながら

「コーヒー、ホットで」とオーダーしている。

「それで、さっそくなんだけど」

なになに? なにか重要な要件?

「三ツ色さん、ギター弾くよね。バンドやってたんだよね?」

えらく、昔のことを掘り返してきたものだ。

 

高校、大学と軽音楽部に所属していた。

ギターはそこそこの腕前で、

大学時代には、先輩に誘われ彼のバンドでプレイした。

その先輩は、実力派のボーカリストでアマチュアバンド界隈では有名人だった。

おかげで、私も月に2、3度はライブハウスで演奏をしていた。

しかし、人間関係が原因で、そのバンドが解散して、

私も活動に区切りをつけた。

大学三回生のときだから、

もう昔、いにしえの話である。

 

「いや、でも息子の学校に教えに行ったりしたでしょ」

確かに、宗介さんの息子、”キンパッつぁん”ことジョージさんに頼まれて、

彼の勤務校の軽音楽部に呼ばれたことはある。

それでも、リズムをもっとパワフルにとか、

下を向いて演奏するな、などとアドバイスしただけだ。

 

「で、宗介さん。俺のギターが何か?」

「バンド、やらない?」

はあ? である。

はあああああ? である。

 

彼の話はこうだ。

『秋のグルメフェスティバル』の期間中の週末、

「中央公園」に屋台村ができる。

そこの野外ステージで、演奏してはどうか。

 

「だってそれは、中学や高校の吹奏楽部や

バトントワリング部が出演するんでしょう。

真田さんの息子(翔太だ)も、張り切ってましたよ」

「それはそうなんだけどさ。おじさんバンドの演奏だってあっていいだろ」

まあ、あってもいいけどさ。なんで私に話が来る。

「そこはほら、三ツ色さんは、フェスの宣伝隊長だし、盛り上げ役だし」

盛り上げ役? そんな仕事だっけ?

それに、宗介さん「バンド」って言ったぞ。

バンドは、俺ひとりではできないぞ。

「ドラムは俺がいる」

ええ! そうなんだ。宗介さん、ドラマーだったんだ。画家じゃなかったの?

「絵は仕事」

息子が、あれはおとんの趣味だって言ってたぞ。

お金になってないだろ。

ドラムは経験者らしい。若い頃。私と同じだ。

ジョン・ボーナムが好きでね」

レッド・ツェッペリンのドラマーじゃないか。

パワフルだな。

「それでも、ふたりですよ」

他のメンバーは、早急に探しまっさ。

宗介さんはおおらかだ。

なんとなく押し切られてしまった。大丈夫だろうか。

 

帰って、何年ぶりかでギターを出してみた。

ギブソンの”ちょっといいやつ”である。

弦を張り替えよう。

そう思った。

その気になってる、俺。

それにしても、ベース担当とか、キーボード担当、

本当に見つかるだろうか。