しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/11/06キンパツ先生

名なしバンドの練習場所は、

キーボード担当の紅一点、木之内先生が勤める『有澤学園』の

音楽室である。

そして、

この学校は、宗介さんの息子、ジョージ君の勤務校でもある。

キンパツ先生、キンパッつぁんである。

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そのキンパッつぁんが、私たちのバンド練習を見に来た。

一曲終わるごとに、宗介さんが「どうだ?」と尋ねる。

「いいんじゃないかな」

とか

「内名さん、下を向いて演奏しないほうがいいと思います」

とか

「パパ、いや、お父さん、ちょっとはしゃぎすぎです」

とかアドバイスをしてくれる。

キンパッつぁん、宗介さんをパパって呼ぶんだ。

私がニヤニヤしていたら

「三ツ色さん、何笑ってんですか」と突っ込まれてしまった。

 

そのキンパツ先生が、私に声をかけてきた。

練習を終え、楽器を片付けていたときだ。

「三ツ色さん…… 先生、このあとお時間ありますか?」

「うん、大丈夫だけど」

「ちょっと一杯、飲みに行きませんか?」

おや、珍しい人から誘われた。うれしいものだ。

「いいよ。行こう行こう」

宗介さんが、聞いていた。

「おお、いいねえ。俺もいっしょに行こ」

息子が言う。

「いや、パパ。今日は三ツ色先生と二人で。

学校のことで、聞いてもらいたいことがあるから。

三ツ色さん、教員の先輩だから」

「そうかあ」

宗介さんは残念そうである。

 

二人で、近くの居酒屋に行った。

ビールで乾杯する。

「よかったのかい? お父さん、寂しそうだったよ」

「大丈夫ですよ。いつも。息子に甘えるんです」

確かに、キンパッつぁん大好きパパである。

「それで、どんな話? 俺、元教員と言っても

辞めてからしばらく経ってるよ。最近の教育現場なんて、よく……」

「あ、すみません。そんな難しい話じゃないんです。

ただ、生徒と教師の関係性がわかる人に話してみたかったので」

 

私たちは、2杯目のビールを注文した。焼き鳥と串揚げがやって来る。

キンパッつぁんが、話し始めた。

 

この項続く。次回から「キンパッつぁん編」。