『秋のグルメフェスタ』、中央公園での屋台村イベント。
名前のないバンドの本番である。
”特設ステージ”(?)”には屋根がないので、
天気が心配だったが、幸い快晴となった。
ただし寒い。ギター担当の私が、
影響を受けそうだ。
キンパッつぁんが
勤務校の倉庫から、年代物の石油ストーブを運んで来て
火を確保してくれた。
屋台目当てのお客様だけではなく、木之内先生の軽音楽部、キンパッつぁんの演劇部の子たちも応援に来てくれた。
先日、会ったばかりの内田さん、沼田さん、そして黒崎樹里亜さんは、
ステージの真正面に陣取ってくれた。ありがたいことだ。
高校生たちがリードしてくれて、手拍子や拍手で盛り上がる。
おかげで、リーダー宗介さんもノリノリ。
一回目のステージが終わった後、木之内先生が「夏目さん、飛ばしすぎです。
ドラムなんだから確実に!」と注意していた。
11時、1時、3時と3回の出番をこなした。中学校のブラスバンドや、ママさんコーラスもある。
屋台村会場には、常に生の音楽が流れていた。
3時のステージで『スティル・ゴット・ザ・ブルース』を演奏した。
思い出の曲だ。不思議と、私の人生の節目に演奏する巡り合わせだ。
最近は、この曲を聴いた萌花が、
私の亡き妻の、墓に連れていけと訴えたのだ。
しおかぜ町から2023/08/06お墓参り!? - しおかぜ町から
出番が終わり、楽器を片付けていると例の三人組がやってきた。
「三ツ色先生」
「やあ、今日はありがとう。ずっといてくれたんだよね。
疲れただろう」
夏目先生になにか奢ってもらったかい?
尋ねようとすると、黒崎樹里亜が言った。
「さっきの曲」
『スティル・ゴット・ザ・ブルース』だ。やはり響いたか。
「あれ、めっちゃ好きです」
『めっちゃ』と来たが、うれしかった。
やはり、どうやらほんとうに、節目になる時期のようだ、私の。
「ありがとう。気に入ってもらえてうれしい。ボクの大事な曲なんだ」
そうなんですか。黒崎樹里亜が私を見た。例の射貫く目。
そのとき、キンパッつぁんが声をかけた。
「おーい、そこの三人、今日はありがとうな、アイスでも奢ってやるよ。
他の連中も、あっちにいるぞ」
「ラーメンの方がいいな」
「だよね」
「失礼します、三ツ色先生」
深い礼をしていく。
いやいや、そんなにリスペクトされるオヤジじゃないんだけど。
「今日は、ありがとう」
私は、もう一度同じ事を言って見送った。