しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/11/25『スティル・ゴット・ザ・ブルース』

『秋のグルメフェスタ』、中央公園での屋台村イベント。

名前のないバンドの本番である。

”特設ステージ”(?)”には屋根がないので、

天気が心配だったが、幸い快晴となった。

ただし寒い。ギター担当の私が、

影響を受けそうだ。

キンパッつぁんが

勤務校の倉庫から、年代物の石油ストーブを運んで来て

火を確保してくれた。

屋台目当てのお客様だけではなく、木之内先生の軽音楽部、キンパッつぁんの演劇部の子たちも応援に来てくれた。

先日、会ったばかりの内田さん、沼田さん、そして黒崎樹里亜さんは、

ステージの真正面に陣取ってくれた。ありがたいことだ。

高校生たちがリードしてくれて、手拍子や拍手で盛り上がる。

おかげで、リーダー宗介さんもノリノリ。

一回目のステージが終わった後、木之内先生が「夏目さん、飛ばしすぎです。

ドラムなんだから確実に!」と注意していた。

11時、1時、3時と3回の出番をこなした。中学校のブラスバンドや、ママさんコーラスもある。

屋台村会場には、常に生の音楽が流れていた。

 

3時のステージで『スティル・ゴット・ザ・ブルース』を演奏した。

思い出の曲だ。不思議と、私の人生の節目に演奏する巡り合わせだ。

最近は、この曲を聴いた萌花が、

私の亡き妻の、墓に連れていけと訴えたのだ。

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出番が終わり、楽器を片付けていると例の三人組がやってきた。

「三ツ色先生」

「やあ、今日はありがとう。ずっといてくれたんだよね。

疲れただろう」

夏目先生になにか奢ってもらったかい? 

尋ねようとすると、黒崎樹里亜が言った。

「さっきの曲」

『スティル・ゴット・ザ・ブルース』だ。やはり響いたか。

「あれ、めっちゃ好きです」

『めっちゃ』と来たが、うれしかった。

やはり、どうやらほんとうに、節目になる時期のようだ、私の。

「ありがとう。気に入ってもらえてうれしい。ボクの大事な曲なんだ」

そうなんですか。黒崎樹里亜が私を見た。例の射貫く目。

そのとき、キンパッつぁんが声をかけた。

「おーい、そこの三人、今日はありがとうな、アイスでも奢ってやるよ。

他の連中も、あっちにいるぞ」

「ラーメンの方がいいな」

「だよね」

「失礼します、三ツ色先生」

深い礼をしていく。

いやいや、そんなにリスペクトされるオヤジじゃないんだけど。

「今日は、ありがとう」

私は、もう一度同じ事を言って見送った。