しおかぜ町から2023/11/16キンパッつぁん、その後 - しおかぜ町から
キンパッつぁんの頼みは
黒崎樹里亜(くろさきじゅりあ)さんに、演技指導をしてほしい、
あと、いろいろ相談にも
乗ってやってほしい、ということだった。
演劇科を受験することが決まったそうだ。
演技の実技試験や面接がある。
そのための練習が必要だ。
もちろん、自分も見ますけど。
居酒屋で5杯目のビールを飲み干して、キンパッつぁんこと夏目ジョージ先生が説明する。
「今まで、演技指導はボクしかいなかったわけで。でも、入試では第三者の試験官が演技を見るわけで。だから、ボクとは違う目で練習を見る人が必要かなと。それで」
「だけど、部外者がいいのかい? それに俺が芝居に関係してたの、ずいぶん前だよ」
「それでも、三ツ色さん、経験者じゃないですか。ボクが昔、見せてもらったお芝居、面白かったですよ。高校生がここまでやるんだって思いましたもん」
そう言われると、悪い気はしない。勤務校の演劇部で、ミュージカルを上演したときだ。
「無理のない範囲でいいですから。臨時コーチという立場でお願いします」
バイク事故のあと、彼女、ずいぶん変わりましてね。キンパッつぁんがしみじみと言う。言葉遣いや態度も落ち着いた。周囲も、戻って来た彼女を受け入れている。今は後輩の練習まで見ている。
松葉杖は、間もなく手放せるということだった。
「あいつ、三ツ色さんのアドバイスならよく聞くと思うなあ。きっと、あいつのタイプですよ」
おいおい、まだ会ってないのに、そんなこと情報としてよこすなよ。
「それに三ツ色さんも、気の強い子、好きでしょ?」
何を言い出す、キンパッつぁん。
「だって、萌花さんもそんな感じじゃないですかあ」
もう、この酔っ払い教師が! そろそろ帰るぞ。
そんなわけで、近いうちに、話題の黒崎樹里亜さまと対面することになった。