しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

「三ツ色日記」2024/02/28

明後日から、萌花が一度フランスに戻る(行く? どっちだ).

それで、バタバタしている。

私の入院で、とりあえずのバッグひとつで帰国したものだから

スーツケースがない。

かといって、あちらのアパートにはでかいケースが置いてあるから

ふたつ引っ張って、日本に戻るのも大変だ。

国際輸送便の費用は、ばかにならない。

できるだけ節約したいのだ。

あちらを整理しないと、

萌花も腰を落ち着けて働くことができない。

私は、収入が不安定なフリーランスだ。

若干の蓄えはあるけれど、そうそう散財することはできない。

「売れるものは売り払ってくるよ」

輸送費払って送っても

日本で使うとは限らないし。

萌花が言う。

家具とか電化製品はそうだろうが

持ち帰りたい物もあるだろう。

「ある程度は覚悟ができてる。

ハプニングだったんだから仕方がないよ」

本当にすまない。

何度も言っているが、本当に申し訳ない。

私が事故に会ったばかりに。

「もう、謝らないでよ。

私も何度も言ってるけど、

おかげで、いっしょに暮らせるようになったんだから。

これでよかったんだよ」

そうか。

と言って、にやけている場合ではない。

準備、準備。

結局、私が国内旅行で使うキャリーバッグを選んだ。

頑丈ではある。海外の乱暴な扱いにも耐えるだろう。

二週間の渡仏。

その間に、全てを片付けなくてはならない。

萌花がスケジュールを確認する。

「ルーメンさんが来てくれたら、助かるんだけどな」

さすらいの占い師は、今はポルトガルにいる。

「ダメ元で連絡してみよう」

萌花がメールを打った。

一分で返信。驚いた。

時差など関係ないのか?

萌花がとびっきりの笑顔で文面を見せる。

「手伝うに決まってるでしょ。

テロリストが来たって、萌花ちゃんを守るって約束したはずだよ。

まかせといて」

これ以上ない、強力な助っ人、参上。