しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/08/29抱かれた女

萌花が、フランスに行く日が迫っている。

準備は大丈夫か?

「こまったら、帰ってくる。だから、だいじょうぶ」

いやいや、そんなことで修行できるのか?

「えへへ。余裕ある方がいいじゃん」

そうか。なんとなく納得してしまう。

パワーはあるのだ、萌花には。

そこにきて、すごい味方が現れた。

 

ルーメンから連絡。テレビ通話。

「はーい。三ツ色さんに抱かれた女で~す」

しおかぜ町から2023/06/18冒険占い師帰国、からの…… - しおかぜ町から

「おい、それ、やめろ」

「あははは。これ言うと、萌花ちゃん、本気でイラッとする。おもしろい」

萌花とルーメン、すっかり友達になったようだ。

「センセー、萌花ちゃんから連絡あった?」

彼女は仕事中だ。フレンチレストラン。

「だよね、さっき萌花ちゃんと相談して決めた。あたし」

なんだ、なんだ? なんか怖いぞ。

「あのね、萌花ちゃんといっしょに、フランスに行くから」

「え? どういうこと?」

「どういうことって、そういうことよ。

 あたしね、フランスとイタリア、あとイベリア半島に行こうと思ってたの。

 そのタイミングで、萌花ちゃんのフランス行き。これはもう天の意志よ」

占い師が、自信満々に言う。

「もちろんアタシは、フランスで暮らすわけじゃないけど、

 何週間かは、いっしょにいる」

さすらいの占い師、ルーメン。

さすがである。

「三ツ色センセーも、安心でしょ?」

確かに。こんな心強いことはない。

ルーメンなら、少々のトラブル、

いや、テロリストや強盗からも、萌花を守ってくれるだろう。

「どこまで、買いかぶってんだよ、アタシを」

そう言いながらも、ルーメンは笑っている。

「センセーの大事な人だからね。まかせときな。

 それに、アタシは、萌花ちゃんの部屋で泊まれる。

 お金、節約できるじゃん」

なるほど。それは確かに重要だ。

 

その後、私の9月からの運勢を聞いて、通信を終えた。

 

夜、萌花から電話。

「ルーメンさんから聞いた?」

「ああ。俺はうれしかった。なんか安心した」

「よかった。でも、すごいね、ルーメンさん。

 ホントに、ヨーロッパに行く予定だったのかな?」

「それはわからないけどさ。あいつは世界中旅してるから、

 そういうことにさせてもらって、いいんじゃないかな」

「うん。なんか楽しくなってきた。女子旅だ。

 でもね、ルーメンさんね、たんびに『自分は三ツ色さんに抱かれた女』って言うの」

「いや、もうあの、あのときだけだから」

しおかぜ町から2023/06/18冒険占い師帰国、からの…… - しおかぜ町から

 

頼むよ。

そのふたりが、いっしょにフランスに行くのか?

いっしょに暮らすのか?