しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/07/22調子に乗っちゃって

「どうして私がいなくなってから

楽しそうなことするの?」

バンドの話。萌花の文句。

「秋のグルメフェスティバルのイベントだよ。

仕方ないじゃないか」

ボーカル不在のオジさんバンド。

「私がやりたかった。グループのセンター」

いや、アイドルグループじゃないんだから。

そりゃあ、彼女がいると華やかだろうが。

「今からでもいいよ。

フランスに行くのやめろ。

日本にいて、むさ苦しいグループの紅一点になれ。

そう言ってくれてもいいんだよ」

おいおい、フランス、行きたくないの?

それにオジサンたちの余興と、

ソムリエンヌとしてのキミの将来とでは、価値がちがいすぎる。

「じゃあ、じゃあ、せめて練習。

練習は見に行ってもいいでしょ?

私だって、三ツ色さんのギター、聞きたいよ」

それはいいけど、萌花。フランス語の勉強もあるだろ?

彼女は、先日からロンバードにフランス語会話を習っている。

しおかぜ町から2023/07/12フランス語ができる人 - しおかぜ町から

「時間はやりくりする。絶対に行く。手伝うことあったら手伝う」

ありがとう。

だけど、宗介さんや、ウチナンチュの内名さんはどう思うだろう。

変に勘ぐられやしないか。

ましてや、練習場所を提供してくださる木之内先生は……。

しおかぜ町から2023/07/20バンド結成からのボーカル不在 - しおかぜ町から

「平気だよ。私、どう思われてもいいもーん。

三ツ色さんは、いや?」

とんでもございません。

ただ、いいおっさんが調子に乗って、

若い女の子連れて来て、みたいな。

「その通りだからいいやん」

はい、ぐうの音も出ません。

「三ツ色さん、調子に乗っていいの。

だって、それだけのことしてるんだから。

みんなの相談に乗って、走り回って。

それに……」

萌花が、間を置く。

てへへ、と笑ってから続けた。

「私の人生を、2回決めた。2回も、だよ」

アイドルをあきらめたこと。

フランス行きを決めたこと。

その2回。

「おまけに、私に告白させといて」

ルーメン事変のときだ。

いや、ごめん。それはごめん。

しおかぜ町から2023/06/22ルーメンと萌花 - しおかぜ町から

「だから、調子に乗っていいの。

私が許す!」

萌花に許されたのなら、いいか。

この夏、三ツ色は調子に乗らせてもらいます。

 

「まだ名前のないバンド・ボーカル不在」の初顔合わせは

数日後に迫っている。