しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/06/24萌花

【承前】つづき

しおかぜ町から2023/06/22ルーメンと萌花 - しおかぜ町から

なおも、私は戸惑っていた。

どうするのが、何を言うのが正解なんだ?

萌花が、下を見て言った。小さな声。

「もう、いいです。ごめんなさい。行きます」

立ち去ろうとする。

私はあわてて、彼女の手をつかんで引き留めた。

萌花が、つかんだ私の手を見つめている。

「わかった、わかった、ごめん、ごめん」

手をつなぎ直す。左手と右手。

「えへへ」

萌花が、手に力を込めた。

しばらく川を見ていた。


まだまだ周囲は明るかった。

くたびれたオヤジと、

この間まで「好きだの嫌いだの、面倒くさい」と言っていた、女子。

確かに、今日も面倒くさいことになってしまった。

それにしても、ルーメンとのハグ事件勃発以来、二時間くらいしか経っていない。

怒濤の展開だ。

「そろそろ、戻らないと」

間もなく開店時間だ。

そっと、手を離す。

しばらく並んで、萌花の勤め先に向かって歩いた。

100メートルほど手前で、私は「じゃあ」と言った。

萌花が「うん」と言って、歩いて行く。

一度振り向いて、小さく手を振った。

近くにいた通行人が、私をチラリと見た。

 

夜にルーメンからLINEが来た。

「今日はお騒がせしました。

ワイン、飲んでる。おいしい」

そうか、そうか。

 

深夜には、萌花から来た。

「今日は、ごめんね。

また、散歩したい」

そうか。

「そうだね」

短く返して、ベッドに入る。

しばらくすると、また着信音が2回。

開くと、でっかいハートのスタンプが連貼りしてあった。

どうした萌花。

どうする三ツ色。