しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

「三ツ色日記」2024/03/03復帰

萌花がフランスへ。

二週間ほどの不在とはいうものの、

一度二人で暮らし始めたものだから、

あらためてひとりで部屋にいると

妙に手持ち無沙汰と言うか、寂しいと言うか、不思議な感覚である。

LINEでのやり取りはできるのだが、

やはり、それでは物足りない。

いい歳したおっさんが、女々しい限りである。

しっかりしようぜ、俺。

 

というわけで、散歩に出た。

もう車に跳ね飛ばされるのはこりごりなので

慎重に歩く。

できるだけ交通量の少ないところを選ぶ。

意味も無く公園を二周したりする。

まだまだ寒いけれど、外気は気持ちいい。

空も青いし、その空の彼方、パリについたであろう萌花を思う。

 

夕食の買い物をしようと思い「スーパーおとくに」に寄る。

怪我して以来、始めてである。

社長が私を見て近寄って来た。レジ係も来た。おいおいレジ、誰もいなくなるよ。

「三ツ色さん、もう出歩いていいのかい?」

「いや、さすがにもう大丈夫ですよ。

そろそろ社会復帰しなくちゃ」

「よかったよかった。大したことなくて」

「まあ、たいしたことはあったんですけどね、ははは」

保険金は? とか、見舞金は? とか、

お金のことを聞かれた。適当に濁して返事しておく。

事故を起こした方からも、金銭的には充分なことはしてもらった。

なんでも、それなりの裕福な人だったらしい。

「もうお酒飲んでいいのかい?」

「はあ、まあ、普通にしてます」

「じゃあ、これ、持って帰りな」

スーパードライの六缶パックを渡された。

「お見舞いってことで」

社長が言う。レジ係が最近は有料の袋まで持ってきてくれた。

恐縮したが、ありがたく頂戴する。

 

いろいろあるけれど、いい町だ、しおかぜ町は。

さあ、本気で活動を再開しよう。

萌花が戻って来る頃には、100%回復していよう。

しばらく電源をオンにしていなかったパソコンを起動する。

メールはiPhoneではチェックしていたが、

それでもサーバーに溜まっていたメールが溢れてくる。

仕事の関係も数件。

 

いただいたスーパードライを開けてから

私はメールの整理を始めた。