しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/05/08個性だ、個性

しおかぜ町も大雨だった。

夜中に、目を覚ましたら、

寝室の窓に雨が当たり

どばどば鳴っていた。

カーテンを少し開けると

水族館を連想した。

なぜか「そっかー」と呟き

また寝た。

深い眠りだった。

私の前世は、鯛か鯖だったのだ、知らんけど。

 

実家の庭は

ほったらかし(関西弁だな)なのだが、

それゆえ、ようわからん花が咲いている。

むだに豪華な、もしくは華麗な花が咲いている。

いとおかし、である。

 

隆二くん(仮名)。

勇ましい名前だ。仮名だけど。

実は、本名も勇ましい。

ね、〇〇くん。

 

女装家である。

LGBTQのどれに当たるのかは、知らない。

私の意識が低いのではない。

本人も「知らん」と言っていた。

「三ツ色、そんな難しいこと言うな」

隆二くんがしゃべるとこんな感じだ。

同じ小学校だった。

記憶にある限り、今のイメージはない。

いつから、そういう格好するようになったの?

まだ、聞けないでいる。

 

セーラー服が好き。

懐かしいタイプのやつ。

スカートは長い。

膝下、である。

服装指導の先生にも、OKもらえる感じ。

「いや、俺の短いスカート、見たい?」

確かに。

だけど、そういう問題?

 

迷惑かかるから。

そういう理由で、しおかぜ町には現れない。

「誰に?」

一応尋ねてみたら、怒られた。

「家族にきまってるやろが」

わかってて聞いたのに(涙目)

だから、おもに大阪に出現する。

 

実は、意外と地味である。

都会には(おそらく)

もっとエキセントリックな女装家がいる、まちがいなく。

真面目そうなセーラー服は、あまり目立っていない(おそらく)。

 

隆二くんは、別にそれでいい。

そう言う。

「この気持ち、どうせ、お前にはわからんわ、三ツ色」

ねえ、さっきから思うねんけど

その格好でそのセリフ、

にあわへん。

隆二くんは、へっへっと笑う。

大阪梅田、

喫煙可能な喫茶店

私には、ケムいだけの空間で、

セーラー服のおっさんが、

セブンスターに火を点けた。