しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

2023/04/13黄砂とミサイルと役立たず

しおかぜ町にも黄砂は来る。

景色が霞んで見える。

確かに吸い込むと体に悪そうだ。

黄砂は来るな!

 

ミサイルも来るな!

結局、来なかったが、

今朝は驚いたね、Jアラート。

特に北海道の人は、緊張されたことだろう。

 

そんな、Jアラート騒動後、

黄砂の中を出かけると、

幼稚園で入園式をやっていた。

ちっちゃい子が、たくさん集まってるとかわいいねえ。

しばらく眺めていたら、バスに乗り遅れてしまった。

 

バス停で待っていると

少し先の歩道で、おばあさんが転んだ。

そのまま動かない。

「あわわ、助けなきゃ」

思ったが、一瞬、出遅れた。

私などが行って、助けられるだろうか。

すると、横をすっ飛んで行くご婦人。

我にかえって、追走する。

別の方向から、若い男性の二人組も走ってきた。

ご婦人が、呼びかける。

「私の声が聞こえますか、わかりますか」

腕を入れて、

うつ伏せのおばあさんの体を反転させる。

私と若者たちは

心配して、覗き込むばかり。

おばあさんは目を開けているし、意識はあるようだ。

「どこか痛いところないですか。苦しくないですか」

女性の問いかけに、小さな声で答える。

「はい。だいじょうぶ。すみません。くらっとして」

「上体、起こせますか」

手を貸そうとしたが、出る幕がない。

私の手が空中で止まる。

女性が、脈を取る。

「たぶん、貧血を起こされたんだと思います」

「救急車、呼びましょうか」

若者のひとりがスマホを持って言う。

「うーん、そこまでしなくても、いいんじゃないかな。

私、時間あるので、しばらく一緒にいます。

大丈夫ですよ、私、看護士なので」

役立たずの男たちは「はあ」と言うばかり。

おばあさんは、近くの医院に行く途中だった。

「関口クリニックだったら、近くよね。落ち着いたらお連れします」

「すみません」

恐縮するおばあさん。

バス停のベンチまで移動した。

若者が手を貸す。

私は、おばあさんの手提げ袋を運んだだけだ。

「みなさん、お忙しいでしょう。

私ひとりで大丈夫ですよ。

ありがとうございました」

役立たず代表の私は、再び「はあ」と言い、

来たバスに乗った。

若者二人も、乗り込んで来た。

彼らが、私に言う。苦笑している。

「お疲れさま、でした」

私も苦笑いだ。

「いや、あのご婦人、頼りになるねえ」

「そうですね。結局、僕ら、いただけでした」

「同じだよ」

役立たずが、外を見る。

 

やはり、景色は霞んでいた。