しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/04/19「スーパーおとくに」

しおかぜ町にもスーパーマーケットはある、当たり前か。

全国規模の大手、

テレビで紹介される高級ブランド、

そして

昔から地域で商売をしている店。

『スーパーおとくに』はそんな店だ。

 

私は「スーパー、お得に」の意味だと思っていたが、

実は、社長さんが「オトクニ」さんだった、なるほど。

そもそもは、商店街の「たまご屋」さんだったらしい。

 

昭和のたまご屋さん。

台の上に、もみ殻を敷いて卵を並べて売っていた。

客は、好きな卵を選んで

かごの中に入れる。

お店の人は、一個ずつ確かめる。電球に当てて。

理由はよく知らない。

買った卵は、新聞紙に包んでくれる。

↓ YouTubeに動画があった。「コラムニスト トコの部屋」

新聞紙で卵を包める!エコで簡単。覚えておけば役に立つ。昭和では当たり前だったのよ。今こそおばあちゃんの知恵。 - YouTube

 

社長さんは、そんな、たまご屋さんから始めて、

商売を大きくしていった。

近くには「〇オン」系の大手や、

他府県からも客が来る高級スーパー。

駅前には、コープもあるし、当然コンビニも競争相手だ。

 

そんな『スーパーおとくに』だが、普通である。

特徴がない。

とにかく、普通だ。

 

魚がとびきり新鮮だとか

野菜が安いだとか、

そういうことでもない。

 

なにせ、もとは「たまご屋さん」なので、

卵の品質はいいのだが、

どうも、わかりにくい。

肉も魚も、野菜も惣菜も

商品は悪くはない、普通。

普通である。

とにかく普通(しつこい)。

だから、マヨネーズやカップ麺は、

「イ〇ン」で買っちゃえば、

ポイントも付くし、みたいな。

 

それでも、

この店が、人気な理由は、

社長と従業員の、人柄と接客だ。

この点で、他店はかなわない。

だって、商売ほったらかして、

客の愚痴を聞いたり、人助けしたりしてるんだから。

 

レジ係が、

おばあちゃんの買った荷物を

家まで運んだりする。

「すぐ、戻りますから」とか言って。

その間、レジ、誰もいないよ。

社長は、どっか行ってるし、

他の店員の姿も見えない。

セキュリティ的にどうかとは思うけど。

そこが、地元の人にはウケている。

 

ちょっとやんちゃな高校生がいた。

悪さをしそうになった。

社長が見つけた。

 

社長は事情を聞いた。

母子家庭で、経済的に苦しい。

本人は私立の高校に通っている。

学費は安くないし、いろいろ金もかかる。

そうそう遊ぶこともできない。

食費を切り詰めていて、常に空腹だ。

それでも、特に珍しい話ではない。

学校に連絡するか、警察か。

それが普通の対応である、普通の。

 

さて、それで、である。

社長は普通ではない。

その子を、アルバイトに雇ったのだ。

学校は、アルバイト禁止だった。

先生にも掛け合った。

 

実は、それがレジ係である。

大学に進学してからも

「スーパーおとくに」でバイトを続けている。

最初は、荷物の搬入と商品出し。

今ではレジを打つ。

お年寄りに親切で人気がある。

信頼もある。

財布から小銭を探すのを手伝ったりしている。

いい話だ。

いい話だが、

他の客(私だ。まあ、おばあさんの家は近いのだが)を

待たせるのはどうかと思うぞ。

それと、

商品に、特徴がある方がいいと思うぞ。