しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/04/30「なぜまたそれを私に」

しおかぜ町も、いい天気だ。

屋内で座って仕事をしていると

寒く感じるけど、表は暖かそうである。

もうGWだものね。

わざわざ混雑している中を

出かけたくはないが

それでも予定はいくつか入っている。

電車やバス、空いてたらいいな。

 

ゴミ捨てに出たら、クニエダさんが立っていた。

95歳。

デイサービスの車が迎えに来るのを待っている。

しおかぜ町から 2023年3月16日 - しおかぜ町から

お元気に見えるが、私が知らないこともあるだろう。

 

「スーパーおとくに」で

しおかぜ町から2023/04/19「スーパーおとくに」 - しおかぜ町から

普通の天ぷら盛り合わせとロング缶のビールを買う。

さて、帰ろうと思ったら、声をかけられた。

「三ツ色センセー」

レジ係だ。支払いは済んだよ。

だいたい「先生」と呼ばれるときは

やっかいな相談だ。

「ちょっといいですか」

ここでは話しにくいので、と言う。

様子を見ていた社長が、代わりにレジに入る。

事務所に案内された。

古ぼけた応接セット。

「そこに『栄光苑(仮名)』、あるじゃないですか」

高齢者住宅である。サービス付き。

いわゆる『サ高住』ってやつ。

ショートステイやデイサービスも実施している。

「あそこの吉田さんって人なんですけど」

入居者ではなくスタッフだそうだ。

彼が、酒を買いにきたら報せてくれ。

所長が、頼みに来たらしい。

酒を飲ませてはダメらしい。

依存症だろうか。

アルコール依存症は、

断酒しても、ビール一口で台無しになるそうだ。

所長はそれを心配しているのか。

「さっき……」

吉田氏がワンカップの日本酒、ハイボールやビールを買っていった。

どうしようと思っているところに、

私が〝のこのこ〟やって来た、という訳だ。

頼まれたけれど、告げ口をするようで。

レジ係が困った顔をする。

 

彼女は自身の過ちを、社長に救ってもらった。

だから、自分も吉田さんを助けたい。

ただ、自分が連絡することで、

彼が失職したりしないだろうか。

知らないふりをした方が、彼のためでは。

レジ係が迷っているのは、そういうことだ。

 

【この項、続く】