しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/04/05

チェーン店のカフェ。

ハムサンドを食おうとしていた。

急に声をかけられて驚く。

ミスター・カラーズ」

金髪の大男は、私をそう呼ぶ。

『三ツ色』だから『カラーズ』。

『三』はどこに行ったんだ?

ロンバード。カナダ人である。私の英語のコーチ。

いいか、とも聞かずに前に座る。

カツサンドマルゲリータピザ。

グランデサイズのアイスコーヒー。

よく食うな。

ミスター・カラーズは最近どうね?」

どうね、って何がだ?

「まあまあだね」

こちらも適当に答える。

「それはケッコーなことね」

全く意味のない会話を、外国人とする。

ボサボサの金髪、口髭。

小さなスタン・ハンセン。

「カナダには? 帰らないの?」

「そうだね。マメンパパ(ママ・アンド・パパ)に会わなきゃと思ってるけど」

ピザをちぎる。

「ほら、今ニッポン、美しい季節じゃないか。サクラ。花見、したいじゃないか」

「なるほど」

花見もいいけど、両親に会うのも大切だ。

そう思うけどな。

彼は3年前の2月に、日本人の彼女と結婚した。

直後、コロナが蔓延し

帰国するチャンスがなかった。

つまり、彼の両親と奥さんは会ったことがない。

「早く会わせてあげなよ」

「オンラインで顔を見てるから、だいじょうぶネ」

「そうかもしれないけどさ」

夏の休暇には実現させるよ、と言う。

まあ、それならいいけどさ。

「カラーズのお母さんは元気?」

グループホームで元気にやってる」

「ユー、会いに行かないとダメだよ」

アンタには、

アンタにだけは言われたくない。f:id:fabuloushunter:20230405202024j:image