しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/09/20夏サンザン

ごぶさたしてしまいました。ようやく頭の傷も癒えました。

しおかぜ町から2023/09/07 流血、その後 - しおかぜ町から

 

新型コロナに感染した。

頭を割られた。

さんざんな2023年夏である。

しかも、いつまでも暑いしね。

 

ようやく包帯もとれて、日常生活も不便はなくなった。

会う人には怪我の理由を聞かれるが

優理のことを考えると、

ほんとうのことを言うわけにはいかない。

「いやあ、上から物がね……ムニャムニャ」

などとごまかしている。

 

そして、そうこうしてるうちに

萌花が出発する日が、迫ってきて、

また、そうこうするうちに

二日前、彼女の「壮行会」なるものが催された、

「そうこう」だけに。

 

会場は、彼女の勤め先だったレストランである。

(だった、と書いたのは、彼女が休職するからだ)

私も招待されたが、怪我を理由に行かなかった。

「行かないでおこうと思う」

萌花に言うと、反対されそうな気がしたが、

意外にも「そうだね」という返事だった。

「どんな顔して出席すればいいかわからないよ」

「そう言うと思ってた。私も照れくさいよ」

「傷が痛むから、とかなんとか言っておこう」

萌花が頷く。

「優理が気を使うといけないから、あの子にはほんとうのこと言っとく」

「そうしてくれ」

「それにね、本音を言うとね」

萌花が、ゆるんだ包帯を直してくれる。

「私の応援をしてくれる会だから、うれしいんだけど、

あまり、大げさにしたくないの。

もちろん勉強は真剣にするよ。だけど、なんて言うのかなあ、

ちょっと行ってきますって言うか……

国内で修行するのと同じ感じでいたいの」

包帯をぎゅっと絞める。いたいいたい。

「俺もおんなじだよ。大げさにされると、

『もう会えないんだ』みたいな気分になる」

「そう、それ」

 

そんなやりとりがあって、私はパーティーの夜、自宅にいることになった。

今ごろ盛り上がってるのかな。

そう思いながら、ひとりでビールを飲んでいた。