しおかぜ町にも、今シーズン最強寒波到来である。
極寒の中、宗介さんからお誘い。
「沖縄料理、どう?」
ウチナンチュの内名さんが働く沖縄居酒屋。
私も、ホイホイと出かけた。
寒かろうがなんだろうが、呑みたい連中はいる。
店は賑わっていた。
「予約してないけど」
ウチナンチュの内名さんが、奥に案内してくれる。
カウンターが2席、運良く開いていた。
「とりあえず、ビール」
「オリオンかキリン、どっちにする」
「もちろん、オリオンだね」
寒いけど、沖縄居酒屋でオリオンビールは外せない。
「バンドのことは、ウチナンチュの内名さんには?」
内名さんには、必ず「ウチナンチュの」を付ける。
しつこいけど。
「いや、今日、話そうと思ってたけど忙しそうだねえ」
「そうですね」
おっさんバンド、継続活動の件である。
「木之内先生は?」
「それはちょっと、むずかしいみたい」
一応「グルメフェスティバル」まで、ということらしい。
「そうすると、練習場所にも困りますよ」
「そうだけど、まあね、なんとかなるでしょ」
宗介さんがオリオンビールをグビグビ呑む。
気楽だなあ。楽観的だなあ。
まあ、あくまでも趣味で演奏するわけだから、
むずかしく考えなくてもいいけど。
「そうそう、ギターと、ベースと、ドラムがいるんだから。
『グランド/ファンク/レイルロード』みたいでいいじゃん」
また、えらく昔のハードロックバンドを持ち出してきたな。
でも、ウチナンチュの内名さんがどう言うかな。
この店の様子じゃ、すごく忙しそうだけど。
そのウチナンチュの内名さんがゴーヤーチャンプルと沖縄風焼きそばを
運んで来たとき、宗介さんが言った。
「バンド、続けようよ。趣味で」
「いいさあ」
二つ返事だった。
にたっと笑って、仕事に戻って行く。
なんか、かっこいいぞ。
そんんわけで宗介さんは上機嫌で、
おかげで、先日につづき私は、
彼を抱えて送り届けることになった。
オリビアさんが不機嫌だったのは言うまでもない。