しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2024/02/01さらにさらに病室にて

承前

しおかぜ町から2024/01/26さらに病室にて - しおかぜ町から

 

「私、三ツ色さんのところに引っ越す。そういう話で、どうでしょうか」

いやいや、それはいいことだ、とは言いにくい。

「ご両親が、どう思われるかなあ」

しかも、番地こそ違えど、同じ町内だぞ。

「だって、三ツ色さんのところだよ。

ウチの両親だって公認だよ」

そうかも知れないけど。

 

そんなわけで、萌花が私の家で暮らすことになった。

とは言え、私は入院中だから

すぐに、いっしょに住むわけではない。

それでも、退院したら「同棲」ということになる。

なんだか気恥ずかしい。

いいのか、こんなオジさんが。

 

話がトントンと進み、萌花のご両親が

病室へ挨拶に来られた。恐縮する。

「娘が、お世話になります」

私は萌花より、

ご両親との方が年齢が近い。

まったくもって、申し訳ありません。

さらにさらに恐縮する。

そんな私を見て、萌花が笑っていた。

仕方ないだろ。恐れ入るんだから。

ほんとうなら、私が挨拶に行かねばならない。

まったくもって、事故にあったのが悔やまれる。

ご両親が帰られた後、萌花にそう言ったら

「でも、そうじゃなかったら

私は今でもフランスにいるわけだから

こういう展開にはならなかったんだね」

人生、どう転ぶかわからないもんだね。

萌花が感慨深げに言う。

なんだか彼女の人生を翻弄しているようで、

オジさんは、余計に恐縮した。