しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から2023/06/29ゲリラ雷雨とオファー

しおかぜ町にもゲリラ雷雨はある。

傘など役に立たない。ひどい目に遭った。

ずぶ濡れで歩いていたら、オリビアさんに声をかけられた。

雑貨屋の前である。

しおかぜ町から2023/04/25金髪オヤジ - しおかぜ町から

「雨宿りしていきなさいな」

お言葉に甘える。

商品を濡らすといけないと思い、

店先に立っていると

「そんなとこにいないで、中にお入りよ」

タオルまで貸してくださった。

勧められるままに、木の椅子に腰をおろす。

これなら濡れていても平気だろう。

「きょうは、宗介さんは?」

「会議。なんか、この辺りのレストランが

協力してイベントやるんだって、秋に。その打ち合わせだって」

「ふーん」

宗介さんは、雑貨店の他にレストランとバーを経営している。

どんなイベントだろう。

美味しいものを、気軽に食べられるなら、ありがたい。

しばらく世間話をしていたら、

ウソみたいに雨がやんだ。うっすらと陽も差してきた。

お礼を言って、表に出た。

私と同じように、雨に降られた人が歩いている。

仕事の途中だったのだろうか。スーツが台無しだ。お気の毒。

帰宅して、着替える。さっぱりした。

ただ、表に干してあった洗濯物がさんざんなことになっていた。

もう一度、洗濯機に放り込んでスイッチを押した。

機械が働いている間に、私はコーヒーを淹れた。

電話。宗介さんからだ、どうした?

まさか「俺がいない間に、女房と……」なんてことは、ないだろうな。

「ああ、三ツ色さん、さっき来てたんだって?」

「雨宿りさせてもらってた。助かったよ」

「そうなんだってな。いや、実はアンタに用事があったんだよ」

秋のレストランイベントの広報に、一枚噛んでほしいと言う。

「ポスターのデザインとか、宣伝文句とか。ほら、キャッチコピーっていうの」

「いやいや、俺、コピーライターじゃないし。広告代理店に話したほうが」

「そこまで予算もないのさ。個人経営の飲食店の集まりだよ」

「しかしなあ……」

「頼むよ、三ツ色さんはこの町の名士なんだから」

”名士”ということばの使い方を、間違ってるよ、宗介さん。

「俺と、〇〇さんの推薦ということで」

〇〇さん。萌花が働くレストランの、オーナーシェフだ。

「そう……なんだ」

 

結局『秋のグルメフェスティバル』とやらの、

打ち合わせ会議に出席することになった。

「よろしく頼んます、『宣伝隊長』」

 

あーあ、これは仕事なのか?