しおかぜ町から

日々のあれこれ物語

しおかぜ町から~追憶編3

承前

しおかぜ町から~追憶編1 - しおかぜ町から

しおかぜ町から~追憶編2 - しおかぜ町から

 

夏休み、私たちはライブハウスに出演するようになった。
島田がオファーを取り付けてきた。

彼は関係者からも評価されていて、顔が利いたのだ。
バンド名は、「京都烏丸ブルースバンド」。

ライブハウスのオーナーが名付け親だ。

あご髭が三十センチくらいある。地元の有名人。

「かっこええやん」
島田も大物の意見は聞く。
「『京都烏丸ブルーバンド』だ」

彼は、なぜか「ブルー」という発音にこだわっていた。
自分の主張を付け加えることは忘れない。

オーナーが苦笑していた。

「キャンディ、咥えとけよ」
私には相変わらず偉そうだ。黙って従った。

具志堅は出番直前に飛び込んで来て、テニスウェアのままでステージに上がる。

島田の歌、

汗だくドラマー、

キャンディギタリスト。

興味を持たれ、そこそこの数の客を集めた。

城間は堅実だった。

「ベース、うまいじゃないか」

髭のオーナーが呟くのを聞いて、私は悔しさを感じた。

自分はキャンディで受けているだけだ。

 

それでも、名前と顔が知られるのはうれしかった。

実力派のボーカルとベース。ユニークなギターとドラム。

地元のラジオ局が取材に来たこともあった。


客前での演奏はプレーヤーを成長させる。
大学祭には、プロのバンドがゲストで来たが、私たちは前座をつとめた。

一回生が三人。異例だった。私たちは自信をつけていった。